中村仲蔵
なかむらなかぞう歌舞伎役者・初代中村仲蔵の出世譚
あらすじ
家柄の後ろ盾を持たない稲荷町の役者・中村仲蔵は、芸ひとつを頼りに名題にまで上り詰める。だが与えられたのは『仮名手本忠臣蔵』五段目、斧定九郎というみすぼらしい端役ただ一つ。工夫のしどころもない役に思い悩んだ仲蔵は、ある雨の日、蕎麦屋で雨に濡れた浪人の姿を目にして、ひらめきを得る。
ここが聴きどころ
端役に新たな命を吹き込もうと苦悩する仲蔵の、芸への一途な執念。そして迎えた初日、静まり返る客席を前に成否を測りかねる緊張の一瞬。役者の一世一代の工夫が実を結ぶまでを描く、芸道人情噺の傑作です。
オチ(サゲ)の型
人情噺のため派手なサゲはなく、しみじみと余韻を残して結ぶ。役者が命を懸けた工夫が客席にどう受け止められたのか、その静かな山場を経て、芸が認められる喜びで締めくくる構成が眼目です。
▼ サゲ(オチ)を見る ※ネタバレ注意
サゲにあたる場面では、定九郎を一新した仲蔵が、初日に客席が静まり返ったのを不評と思い込んで思い悩むが、それは客が息をのむほどの出来栄えだった証と判明し、大成功をおさめる。芸が認められた感慨で結ぶ。
意味・元ネタ・豆知識
初代中村仲蔵(一七三六〜一七九〇)は実在の名優で、家の血筋によらず芸のみで名題に昇った立志伝中の人物。『忠臣蔵』五段目の斧定九郎を、黒羽二重の浪人姿へと作り替えた工夫は、今日まで受け継がれる型となった。落語のほか講談でも語り継がれている。
代表的な演者
六代目三遊亭圓生立川談志