千両みかん
せんりょうみかん一個の蜜柑が千両になる金銭の噺
あらすじ
真夏、大店の若旦那が床に伏せ、食べたい物を尋ねると「みかんが食べたい」と言う。季節外れのみかんを探して番頭が町じゅうを奔走し、ようやくある問屋で、蔵に大事にしまわれたたった一個を見つけ出す。だが問屋が付けた値は、なんと千両であった。
ここが聴きどころ
「たかがみかん一個に千両」という金銭感覚の逆転が生む可笑しさと、若旦那の命を思って必死に走り回る番頭の姿。真夏の一個のみかんが持つ途方もない価値をめぐる、理詰めの遊びが聴きどころです。
オチ(サゲ)の型
考えオチ。番頭が手にしたわずかな房の値打ちを胸のうちで勘定するところに、金の価値の相対性を鋭く突いて落とします。真面目に積み上げた理屈が、最後にふっと人情の綾へ転がる構成が眼目です。
▼ サゲ(オチ)を見る ※ネタバレ注意
サゲは考えオチ。若旦那が食べ残した三房を親兄弟に届けるよう託された番頭が、「一個千両なら三房で三百両」と胸算用し、その三房を持って店を出奔してしまう。
意味・元ネタ・豆知識
千両は今の数千万円にも相当する大金。紀州蜜柑は本来冬の果物で、冷蔵技術のない時代に真夏まで傷ませず保つのは至難の業だった。金では買えぬはずの物に法外な値が付く、という価値の逆転を描く。上方・江戸の双方で演じられる。